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2013年4月の記事

回想

4月11日(木)

 

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春の朝のささやかな寒気は嫌いでない。縁側で寝起きのタバコを一本吸いコーヒーを飲むのが日課になっている。オマケ軍団が来てからというもの屋内でタバコを吸うことがなくなった。おかげで部屋はヤニ臭くもなく火の気の心配も減ったが、冬場は妙に惨めに思えたりする。我が家の中庭には小鳥が入り込んでくることがちょくちょくあり、今朝も一羽の小鳥が庭石の上にいるのを見つけた。なんという鳥か目をこらせば見分けられたのかもしれないが、老眼ではそこまでする視力も好奇心もない。仔猫だった紋次郞が我が家に来たばかりの頃、庭に放って遊ばせていると塀の上から二羽のカラスが目を光らせていたのを思いだす。あの時のカラスは間違いなく小さな仔猫を狙っていた。幸いにスパイクが紋次郞のそばから離れずにいてくれたので案ずるもなかったが、内心ヒヤヒヤものだった。

 

 

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――夕方から金澤まで足を運ぶ。ひとりで電車に乗るなんて何年ぶりだろう? むかし何ひとつ言えないまま別れとなった幼なじみと、地元の安いホルモン屋で逢う約束をした。幼年期を過ごしたアパートの向かいにあった小さな店だった。子供の視線から大人へとなったことで、ところどころの景色やそばにあった脇道が思っていた記憶より狭く小さなものに見えたことに多少の戸惑いはあったにせよ、何かが変わっていたということはなかった。違っていたことといえば住んでいた木造アパートが取り壊されていたのと、ワンパク坊主がオッサンの顔に変身していたことだ。
小学2年になりクラス替えをしたばかりの春に県外へと転校した。前日までなにも知らず耳に入ったのは当日の職員室だった。その数時間後には知らない土地へと向かうトラックの荷台の中で荷物と一緒にうずくまっていた。あれから30年、いや40年近くになるか‥。

 

 

ホルモン屋ののれんを潜ると座敷に座った。四十数年も生きていればそれぞれに何やらの苦労話もあるだろうが、それはどうでもよい。

気持ちはあの時代とあの頃の少年へタイムスリップし花が咲いていった。もう忘れられているだろうと思っていた自身の存在を事細かに記憶していてくれたことに胸を打たれると同時に、素直になれた場所があったことにうれしさを感じてた。

 

 

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オマケ軍団がボロ家で待っているので時間は限られていた。時間の流れは思う以上にはやく時計の針も22時を過ぎていた。「そろそろか」と帰る電車の時刻を気にしながら名残惜しみ店を後にする。数分歩けば町駅がある。その間の帰路はまわりの景色を見ることもなく地面ばかり見て歩いた。帰りの電車のなか、ぼんやりと窓に目をやった。暗闇を吸ったガラスは鏡となり自身の姿を映し出している。引っ越し、転校を繰り返してばかりの少年期を送っていた。心の中から否応なしに湧いてくる感情に振り回され、意思とは別に生まれてしまった心の傷がいくつも植えつけられていく瞬間を経験してきた。もっと早くに故郷へ行っていれば良かったのかもしれないが、若い時に面汚しの行為をさまざまとしたせいか、人というものを信じれず生きたのがながく思うよう出来なかった。そんなトラウマのような欠片のひとつが今日で薄れていった気がしている。

 

帰宅すると軍団の影が玄関扉のスキガラスがら浮かび上がっている。闇の中にひっそりとうずくまりながら待ちぼうけていることを考えると、ただただ抱きしたくなった。冷えた体を抱けば肌に触れる毛の1本1本から情感が広がっていく。妙に胸が熱くなる日だった。番犬にはほど遠い先住犬と猫の動きに癒やされながら、オマケ軍団と二次会をはじめた‥。

 

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